令和時代の法人の形?「労働者協同組合」とは

世の中には、さまざまな活動に取り組む集合体としていろんな団体形態がありますが、令和2年12月「労働者協同組合法」が成立し(令和4年10月施行し)、新しい法人形態として「労働者協同組合」ができました。

少子高齢化と人口減少が進む日本において、介護・子育て・地域づくりなどの幅広い分野でさまざまな社会課題が噴出していますが、各々がそれぞれの考え方や働き方に応じて、NPO法人や企業組合などの法人格や、またはあくまで任意団体として法人格を持たずに活動してきました。
しかし、NPO法人は出資ができない、任意団体では個人としてしか契約できないなど、どれも課題を内包しており、それが理由で団体設立を諦める人が一定数いることにも繋がっています。そういった状況の中で、非営利性を担保しつつ、企業体としての収益事業も行うことができる新しい企業類型が求められていました。そんな中、そういった課題を同時に解決できるであろうことを期待され、この「労働者協同組合」が誕生しました。

この法人形態の基本原則は以下の3点。

  1. 組合員が出資すること【出資原則】
  2. 事業を行うにあたり、組合員の意見が適切に反映されること【意見反映原則】
  3. 組合員が組合の行う事業に従事すること【事業従事原則】

地域社会において生じている多様なニーズに対して、担い手は不足しています。地域のことは地域の人たちが可能な範囲で力を出し合うことで自らが担い手となる。そのためにはまず多様な働き方を実現する必要があります。

この「労働者協同組合」は、地域社会を守る担い手として多様な働き方を実現しつつ、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的にしています。

上記の原則を株式会社と比較して図で示されています。出資・経営・労働の3点が、株式会社は分離しているのに対して、労働者協同組合では三位一体と記載されています。

厚生労働省「労働者協同組合の概要資料」より

設立要件

労働者協同組合は、3原則を実現するために様々な要件が設定されていますが、合わせて、より簡便に法人化できることも重視された設立要件になっているところが注目点でもあります。

  • 3人以上の発起人が必要。
  • 出資は、組合員(個人)が行う。かつ、組合員が4人以上の場合は、1組合員が100分の25以上を持ってはいけない。
  • 議決権は、1組合員に1議決権(出資口数は関係なし)。
  • 配当は、事業に従事した比率(出資比率ではない)で組合員に配当ができる。
  • 総組合員の5分の4以上の組合員は、組合の行う事業に従事しなければならない。【5分の4要件】
  • 組合の行う事業に従事する者の4分の3以上は、組合員でなければならない。【4分の3要件】
  • 組合との間で労働契約を締結する組合員が、総組合員の議決権の過半数を有すること。【過半数要件】
  • 取り扱える事業は、労働者派遣事業を除くすべての事業。
  • 要件が揃えば、設立・登記が可能。【準則主義】
  • 設立後に、行政庁への届出は必要。

費用はかかるの?

一般的に株式会社を設立するには、定款認証(公証人)や登記をするときに必要な登録免許税など、十~二十数万円程度かかりますが、労働者協同組合は設立費用は一切かかりません。定款認証はそもそも認証手続きが不要であることに加え、設立登記に必要な登録免許税も非課税となっております(ちなみに、設立後に行う、理事などの変更届出も費用はかかりません)。定款作成や登記自体もすべて自分たちで行うのであれば、費用として必要なのは、出資額のみで設立できます。しかも出資額はいくらからといった指定もないので、団体によっては1口5千円などの低い金額に設定している団体もあります。しかし、安易に低い金額設定にすると、その団体の理念や活動内容などをよく理解していない状況で組合員になりたい人などが出てきてしまうため、そこは注意が必要です。そういった意味でも、一人の代表によってのみ意思決定するものではなく、組合員同士で話合いながら、自分たちはどういう仲間と運営していきたいのかを決めていくという原則の体現でもあります。

とはいえ、やはり法人を設立するときに、少なからずともひとつのハードルになる費用面を気にしなくてよいというのは魅力の一つですね。

また、この法人形態の目的の一つに「簡便に設立できること」があります。非営利団体はその性格上どうしても地域住民や行政庁の認可が必要です。NPO法人に至っては、取り組む分野の指定も細かく、活動報告も細部まで必要になりますので、運営負荷がかかることはいうまでもありません。一方、この労働者協同組合は、設立要件さえ満たしていれば、設立登記までできます(準則主義)。行政庁への年度の報告は必要なものの、決算報告と事業報告書のみであり、事業体であれば必ず作成するものなので、追加の負荷がないというのも大きな魅力です。

設立・活動状況

令和8年7月現在で、計191法人が存在しており、約4分の1は企業組合等の別組織からの変更が占めております(下図左下)。分野の例では、高齢者支援や子ども支援などの、地域支援活動ではメインとなるような分野がある一方で、配送や人事・コンサルタント業など一般の企業と同種の業種も多数あり、分野の幅広さがうかがえます(下図左上)。

厚生労働省「労働者協同組合の概要資料」より

全国のNPO法人数4万8,944法人(令和8年5月時点、内閣府NPOホームページより)、財団や社団等の助成型団体数が8万4,477法人(令和3年3月時点、助成財団センターホームページより)。比較的近い法人形態である、企業組合でも1,651法人(令和4年3月時点、中小企業庁ガイドブックより)とするとまだまだ少ない数ではありますが、まだ施行して4年足らずであることから、行政の支援施策もいくつか進められており、相乗的に認知が上がったときに実際どういう数字になるのか、楽しみでもあります。

設立の流れ

では、実際にどういった手順で設立するのでしょうか。ここでは、その設立手順をご紹介いたします。

(1)発起人を3人以上集める。
理事の定数は3人以上とし、監事は1人以上とする。もし発起人総数が3人の場合は、理事3名(1名は代表理事)、外部監事1名となる。
※上記要件にある、人数要件(5分の4要件、4分の3要件、過半数要件)は別途確認と設定が必要。
(2)定款・事業計画・収支予算・役員案等の作成
法律記載の絶対的記載事項を網羅した、定款を作成する(モデル定款あり)。それに合わせて事業計画や収支予算、役員の案もすべて発起人で作成するため、発起人間での意思疎通の意味も含めてできる限り具体的なものを可視化、明文化しておく。
(3)創立総会の公告
創立総会の開催日時及び場所とともに、開催日の少なくとも二週間前までに公告を行う。公告方法は、当該事務所の店頭に掲示する方法のほか、官報や日刊新聞社に記載、電子公告など一般的企業と同様の公告方法を選ぶことができる。
(4)創立総会の開催
創立総会を開催。定款の承認、事業計画・収支予算の議決、役員の選挙、議事録の作成を行う。組合員たる資格を有する者で、その会日までに設立の同意を申し出たものの半数以上が出席して、その議決権の三分の二以上で決する。
(5)出資の第一回の払込み
発起人から理事へ、事務に引き渡す。及び、理事は出資の第一回(出資一口あたり四分の一以上)の払い込みをする。
(6)法務局で設立登記を行う。
出資払い込みから2週間以内に、事務所所在地のある法務局において設立登記を行います。設立登記申請は予約制なので、いきなり訪問するのではなく、該当法務局に予約を入れてからその日時に向かいます。
必要なものは、①設立登記申請書(&②別紙)③定款 ④創立総会の議事録 ⑤理事会の議事録 ⑥役員の就任承諾書及び誓約書 ⑦出資引受書(&⑧出資払込領収書の控え) その他必要書類もありますので、法務局に予約を入れるときに、電話確認しておきます。
(7)管轄行政庁へ設立の届出
組合成立の2週間以内に、登記事項証明書及び定款を添えて、その旨及び役員の氏名・住所を管轄行政庁まで届け出る。

最後の行政庁への届出以外は、ほぼ会社設立と同じ流れであり、非常にわかりやすい手順といえます。

どういう事業(人)が向いている?

要件の部分で記載したとおり、労働者派遣業以外であれば、地域でニーズがあるとするものであれば、基本的に事業は自由に選べます。また、組合の意義自体に「多様な働き方を実現する」ということが掲げられているとおり、働き方も組合員自らが決めることができるので、特に対象を絞りません。例えば、フリーランスをされている方やテレワークの会社員の方(副業OKの方)が副業として仲間とともに組合を立ち上げるということもありますし、シニア・ミドル世代のセカンドキャリアとして地域づくりの一環として行うことなども可能です。

以上のことから、非常に幅広い方が選択しうる法人形態といえます。

ただし、最初からより営利性を求める場合や、自分の好きなようにスピード感をもって意思決定や事業展開をしたい方、などは株式会社や合同会社などの会社形態を選択するほうがよさそうです。

メリット・デメリット

最後にメリット・デメリットを整理しておきます。

メリット

  • 3人の仲間がいれば、費用が掛からず簡単に設立することができる。
  • 働き方や事業に自由度が高く、会社員やフリーランスとの併用も可能。
  • 法人格を得ることで、その他法人や団体との契約などがしやすくなる。
  • バックアップ支援策を行っている地方自治体も多く、法人格により契約や連携もしやすい。

デメリット

  • 組合員で方針や事業内容、運営ルールなども決めるので、もめると事業実行に支障をきたす危険がある。
  • 出資者=従事者のため、事業が軌道に乗るまでは低賃金になる危険がある。
  • すべての組合員で労働契約を結ぶわけではないので、理事という名の事業従事者が出てくる危険がある(名ばかり理事)。
  • 会社と違い、行政庁への年一回の報告(決算報告、事業報告書)義務があり、めんどくさい。

まとめ

いかがでしたでしょうか。これまでの法人形態に足りなかったものをできる限りカバーされた新形態として成立してから早4年。既存の団体の中には、この労働者協同組合の成立と同時に、法人変更を行ったところもいることから一定数の期待や支持は受けていることはうかがえますが、総数でみるとまだまだその認知や影響度は高いとはいえません。今後も行政側の認知促進や支援策はしばらく続くと思いますが、やはり最終的には団体自身がどう思うかです。

そもそも、法人形態は絶対正解というものはありません。自分(たち)がなにをしたいのか、をまずしっかり検討することが大事なのはいうまでもありませんが、いろんな法人形態を並べて検討してみることで、自分に合うかどうかから絞っていくという使い方も面白いかもしれませんね。

当事務所では、法人設立サポートを行っております。法人立ち上げにお困りの際は、ぜひご相談ください。初回相談は無料です。

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